グッと身近に来る日本史

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大学と地域の連携で映像ライブラリーを

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日々作られていく歴史を映像でどう記録、伝承していくか?(photo by PAKUTASO,つるたま)

 

 映像で歴史を遺す--。そんなことはNHKをはじめとするテレビ局がやればいいんだ、と他人事のように思われる方も多いと思います。

 

gootjapan.miyatohru.com

 

  しかし、まずテレビ局はあくまで営利企業ですから、限られたスタッフで制作し、数字(視聴率)に追われています。いつどのような形で使われるかわからないものに時間をそう割くことはできないでしょう。

 

 もちろん、テレビ局が制作した歴史番組はあります。それでもテレビ局にはあまり頼れない事情があります。権利問題です。

 

 活字(文字)の世界では、他の出版物からの引用については一定のルールの範囲内で認められています。たとえば、大手新聞の記事でもその引用については、出典を明示するなどのルールに従えば、とくに先方に断る必要なく一般の人間でも普通に引用できます。

 

 ところが、テレビの映像はそうはいきません。一般の人間が制作する作品の中でテレビで放送された映像を使わせてもらうなど、現行では、まず絶望的と考えていいでしょう。

 

 媒体としての活字(文字)は、長い歴史がある分、皆で知識を共有して、人類知を膨らませていくという社会的な仕組みができているように思います。一方の映像媒体は、とくに一般の人間が制作するという前提には立っていないためか、社会的な仕組みが未整備です。

 

 希望的なことを言えば、これからそのような仕組みの整備が進むことを期待したいですが、少なくとも短期的にはテレビ局が制作した映像の一般利用(引用)は考えられません。

 

 こうした理由から、人類共通の資産として映像で歴史を記録していくということを考えれば、その主体は当面、一般(アマチュア)の方々となります。(プロの方の場合は社業とは別にボランティアとして活動されるケースになるでしょう)

 

 そのような意図で作られた映像を保存、ネット上で閲覧のできるライブラリーを作り、全く権利を主張しないパブリックドメインとまでは言わなくとも、一定のルールでの引用を許容し、人類の共有資産として活用できるようにするのが理想です。

 

 ただし、現状、アマチュアの方々は基礎的な映像制作のノウハウがありません。それを習う場が必要になります。そこで考えられるのが大学です。

 

 たとえば、大学で映像制作演習講座を実施する。若い学生さんはもちろんですが、社会人でもオープンカレッジのような形式で学べるようにするといいでしょう。

 

 そして、その講座の修了生が実社会の中で、様々な方にインタビューなどをしながら映像での記録に取り組んでいく仕組みを大学と地域の連携で作っていくといいと思います。

 

 具体的には、琉球大学であれば、沖縄戦を実際に体験されたの方の証言(インタビュー)をできるだけ記録する。あるいは早稲田大学は東京の墨田区とすでに連携していますが、そこでは地元が大きな被害に遭った東京大空襲を体験された方の証言を記録していくような取り組みが考えられます。

 

 さらに、歴史は戦争だけではありません。今となっては戦後の高度成長期も歴史の域に入ってきました。こうした時代を経験した方々の証言を、ずい時、記録していって未来につなげていくことも考えられます。 

 

 このような形で映像のライブラリー化が進んでいけば、人類の共有資産として有意義なものになるでしょう。

 

 そのための最初の取っかかり(参考図書)として、『大学生のための動画制作入門』をご活用いただければと思います。(筆者のひとりとして、膨大な時間を費やした努力が報われるというものです)