【歴史哲学】ヒストリーとストーリーは同じことばである
引き続き、岡田英弘氏の『歴史とはなにか』を読みながら、歴史を哲学していきます。前回は本書の中から「歴史は物語であり、文学である」をひいて、歴史の中にある不確実性の部分について考えましたが、今回はまた別の側面からこれを考えさせられるような話です。
historyとstoryが同じことばって、どういうこと?!(photo by PAKUTASO、モデル:河村友歌)
ヒストリーとストーリーは同じことばである。
これは英語では歴史(history)と物語(story)の語源が同じということです。もともと物語(story)には「個々のできごとがつながって物語になる」といった意味があり、そう考えれば、歴史(history)も同じ事になります。つまり「個々の史実をつなげて、その因果関係を考察する」のが歴史だからです。この「因果関係の考察」が、「物語作り」に通じます。
人間にとって、なにかを理解する、ということは、それにストーリーを与える、物語を与える、ということだ。(中略)物語がないものは、人間の頭では理解できない。だからもともと筋道のない世界に、筋道のある物語を与えるのが、歴史の役割なのだ。
これを踏まえ、岡田氏は
世界自体に筋道がなくても、歴史には筋道がなければならない。
と持論を展開しています。前回ご紹介した「歴史は物語であり、文学である」でご説明した通り、歴史は科学ではないので、絶対的な法則はありません(=筋道はない)。しかしながら、歴史を理解するにはストーリー(筋道)が必要だ、ということです。
世界はたしかに変化しているけれども、それは偶然の事件の積み重なりによって変化するのだ。しかしその変化を叙述する歴史のほうは、事件のあいだに一定の方向を立てて、それに沿って叙述する。そのために一見、歴史に方向があるように見えるのだ。
【関連リンク】
柴田耕太郎主宰「英文教室」オフィシャルブログより。歴史(history)と物語(story)の語源について、英語学の専門家の視点から考察しています。こちらもあわせてお読みいただくと、より理解が進むと思います。