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坂本龍馬が今後も教科書に残る可能性

 近い将来、高校の歴史教科書から坂本龍馬の名が消えるかもしれない-。そんなニュースが流れ、世間を騒がせました。高校と大学の歴史教育者で作る「高大連携歴史教育研究会」が、教科書の用語数を削減しようという提言をしたためです。

 

 では、これで本当に坂本龍馬が教科書から消えてしまうのでしょうか。今回は、現実に龍馬の名が教科書から消えることの影響、そして復活の可能性について見ていきましょう。

 

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龍馬はこれで本当に教科書から消えてしまうのか!、復活の可能性は?

 

 その議論を始める前にまず、現行の教科書では坂本龍馬について実際にどのような表記がされているのか、知る必要があります。高校での教科書採択率の高い山川出版社の『詳説日本史B』2017年版から、龍馬に関する記述部分を抜粋すると、

 

 

1866(慶応2)年には、土佐藩出身の坂本龍馬・中岡慎太郎らの仲介で薩摩藩は長州藩との軍事同盟の密約を結び(薩長連合、または薩長同盟)、反幕府の態度を固めた。 

 

これに対し土佐藩はあくまで公武合体の立場をとり、藩士の後藤象二郎と坂本龍馬とが前藩主の山内豊信(容堂)を通じて将軍徳川慶喜に、討幕派の機先を制して政権の返還を勧めた。 

 

と2カ所に具体的な表記があります。

 

 たったの2カ所、幕末という時代の限られたページの中ですが、政局にからんでる感は充分に出ているような気がします。

 

 こういった表記が完全になくなると、どうなってしまうのでしょうか。歴史に詳しい方であれば、教科書に載っていようがいまいが、自らの価値判断を持てるのでしょうが、普通の方の場合、やはり「教科書落ち」ということで、歴史上の人物の序列上、二流感を感じてしまうのかな、という気がします。

 

 こう考えてくると、危うし、龍馬ブランド! と思ってしまいますが、ちょっと待ってください!。

 

 引用した2カ所をよくよく見てみると、薩長連合が太字表記なのに対し、坂本龍馬の名前部分はいずれも太字ではありません。参照した山川の教科書には、太字表記の意味が明記されていませんが、おそらくこれが「覚えるべき歴史用語」なのだと思います。

 

 太字表記でなければ、実は結構、幕末でも多くの人物名が登場します。これは「覚えるべき歴史用語」扱いではないものの、「便宜上、あった方が説明しやすい」といった教科書執筆者個々の判断からでしょう。

 

 今回の用語削減の提言の中でも、「薩長連合」については存続の方向が打ち出されています。とすれば、その説明の便宜上、坂本龍馬の名が残ることは充分に考えられます(ただし、太字表記ではありませんが、もうすでに山川の教科書で坂本龍馬の表記は太字ではありません)。

 

 実は今回、このような提言が出てきた背景には、文部科学省が2022年をめどに、小中高すべての科目で「主体的で対話的な深い学び(アクティブラーニング)」の導入を目指していることがあります。高校の歴史教科書もこの流れの中で抜本的な見直しを迫られています。

 

 こう考えれば、今回の提言が実施に移される可能性は高いと言えます。ただ、坂本龍馬の名前については、今後は「覚えるべき歴史用語」扱いではなくなるものの、「説明の便宜上」という教科書執筆者個々の判断により、これまで通り残る可能性が高いのではないでしょうか。

 

 生死の境をさまよいながらも、しぶとく生き残る-。というのも、この人らしくていいのかもしれません。