まとめ:歴史を暗記科目から脱皮させるために
近い将来、高校の歴史教科書から坂本龍馬の名が消えるかもしれない-。そんなニュースが流れ、世間を騒がせました。高校と大学の歴史教育者で作る「高大連携歴史教育研究会」が、教科書の用語数を削減しようという提言をしたためです。
同研究会がこのような提言をした背景には、「歴史的思考力の育成」を掲げ、「歴史系科目=暗記科目」からの脱皮を図る、といった目的があります。
(photo by PAKUTASO、モデル:河村友歌)
しかし、これを実現するには用語の削減だけでは済まされない難しい問題が潜んでいるとして、本ブログでは、これまで3回に渡ってこの問題を考えてきました。
今回は、そのまとめ的提言です。
●旧帝大は率先して個別試験から歴史を除外する(=東北大方式)
難関校で入試=ふるいにかける試験を課そうとすれば、しかも定理・法則のない歴史の場合、どうしても難問・奇問が出てきてしまう。それでは、いっこうに歴史用語の膨張傾向に歯止めがかけられない。そこで、東北大学文科系全学部がすでに実践しているように、旧帝大などの主要大学は率先して個別試験で歴史(社会)を課すのを止める。ただし、基礎的学力を問うセンター試験については現行通りに実施する。
また、近年、歴史的思考力を問おうとする傾向もあるが、これを進めると、採点の公平性の問題が出てくる可能性があるので、思考力については、無理に歴史で問おうとするのではなく、数学で代用する。
これらにより、歴史を入試の呪縛から解放、教育現場の自由度を高める。
●高校教科書の用語に「総量規制」を導入する
新規に歴史用語を採用する場合は、同時に重要度の薄れた用語を落とす作業をして、その総量をコントロールする(=総量規制)。
場合によっては、時代別に用語の配分に差を付けるといった発想を採り入れるといったことも考えられる。たとえば、現代に近づくにつれて、より多めに配分するようにすれば、古代史はおおまかな流れを、近代史はより細かな事実関係を、学ぶ形になる(=傾斜配分方式)。
●教育者以外を交えて高校向け新カリキュラムの開発に取り組む
大学入試という呪縛から歴史を開放、自由度を高めた上で、歴史的思考力を育む新カリキュラムを開発する。その際、NHKの歴史系番組制作経験者など外部識者を交え、これまでにない発想の導入に努める(=新カリキュラム開発モデル事業)。
また、自ら主体的に歴史を調べるということが、歴史的思考力を育むのに極めて適していることから、ファミリーヒストリー調査演習のカリキュラム化を検討する(=歴史のアクティブラーニング化)。ファミリーヒストリー調査は自ら歴史にアクセスしていく必要があり、また自分で考えていかなくてはならない(暗記に頼れない歴史)。その過程で背景にある歴史(社会史)も学ぶ必要がある。
以上、民間研究者の拙論にて、失礼いたしました!。