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「歴史教科書から坂本龍馬が消える!?」を哲学する

 近い将来、高校の歴史教科書から坂本龍馬の名が消えるかもしれない-。そんなニュースが流れ、世間を騒がせました。高校と大学の歴史教育者で作る「高大連携歴史教育研究会」が、教科書の用語数を削減しようという提言をしたためです。この話は、このブログのテーマからすれば、少しイレギュラーではありますが、歴史を考える上では重要な話題です。今回は、この問題を「哲学」していきましょう。

 

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教科書から坂本龍馬が消える!?。歴史ファンにとってやきもきするような話が、学界で検討されている

 

 まず、同研究会の提案理由をみていきましょう。「高等学校教科書および大学入試における歴史系用語精選の提案」(第一次)からの抜粋です。

 

 長年、高等学校の世界史・日本史教育では歴史的思考力の育成の重要性が指摘されてきたにも拘わらず、歴史系科目は「暗記科目」だという概念が生徒を始め多くの人の間に定着してきました。2006年(平成18年)秋に表面化した「世界史未履修問題」でも、世界史の「用語・事項」つまり固有名詞や年代が多数にのぼるため、暗記が大変と考えた生徒たちが、大学受験で世界史選択を敬遠したことが一因といわれています。

 

高等学校における歴史系教科書の用語膨張の原因には、大学入試で細かい用語の暗記力を問う問題が出続けていることの影響も大きいわけで、用語の精選は教科書だけでなく、大学入試の出題用語の精選と並行して行う必要があることを意味しています。

 

 これに対する私個人の意見ですが、研究の進展によってやみくもに新しい用語を増やすだけでなく、同時に重要度の薄れた用語を落とす作業、いわば「歴史用語の総量規制」のような概念の導入は必要だと思います。

 

 実際に現在、高校で利用されている日本史の教科書をチラチラ見ても、私が学生として見ていた昭和の時代のものと比較して用語が多く、その羅列感は半端ではありません。きっとこれだけを見て嫌になってしまう高校生も多いのだと思います。(高校での教科書採択率の高い山川出版社の『詳説日本史B』は、社会人でもネット書店で手に入ります。これを機に一度、見てみてください)

 

 

 ただ、ここで研究会が提言の主たる理由としてあげている「歴史系科目=暗記科目」からの脱皮を図るといった点では、総量規制を導入しただけでは、抜本的な対策とはならないともみています。

 

 実はこの問題、決して新しい問題ではありません。私自身、高校生であり受験生だった1980年代にも同じことが言われていたので、それ以前からの問題だったはずです。その後の用語の増減だけを理由に説明できる話ではありません。

 

 私自身のことを言えば、子供の時からの歴史ファンで、NHKの大河ドラマは小学生の時から欠かさず見ていたし、やはりNHKの歴史番組などもよく見ていました。司馬遼太郎さんをはじめとする歴史小説も中学、高校の頃には好んで読んでいました。

 

 にもかかわらず、受験科目としての日本史は選択しませんでした。「歴史は流れ(ストーリー)を理解するもの」と考えていた私にとって(今でもそう思っています)、当時の高校教育、あるいは大学入試における日本史が、「ただ細かな年号と事象を記憶するだけの科目」と思えたからです。勉強法としては、英単語の丸暗記と同じで、バカバカしくてやっていられない、という理由です。 

 

 実はそれが主たる理由で、文科系学部ながら入試科目に社会科がなかった慶應義塾大学の経済学部に進学しました。慶應の経済の入試科目は、当時も今(A方式)もそうですが、英語と数学と小論文のみで、他大学、学部とは少し違っています。これは、「入試科目から暗記部分を排して、徹底して論理的な思考力を問う」といった考え方なんでしょう。

 

 さて、このように私自身もかねてから問題だと思ってきた、「歴史系科目=暗記科目」となってしまっている問題ですが、これだけ長い間、問題とされながら、いっこうに改善の兆しが見えないということは、この問題の中にある種の「宿命」のようなものがあるということなのだと思います。

 

 とすれば、それを踏まえた上で、現実的な対応をしていかなければ、用語数を減らしたぐらいではこの問題は解決しない、ということです。

 

 では、そのある種の「宿命」とは何なのか。私は、歴史という学問の特性、そして入試という制約、このふたつの「宿命」が大きいとみています。このふたつの「宿命」を踏まえた上で、現実的な対応とは何なのか、考えていきたいと思います。

 

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